ブラジル経済。ブラジルは買いか?

政情安定と経済発展のリンクを再確認

ブラジルはラテンアメリカで最大の経済規模を持つ。そうなった理由は、人口が2億人と多く内需が大きいことも勿論あるのだが、僕は政情が他のラテンアメリカの国に比べて安定していたのが大きいと考えている。政情が安定しない国はダメ、ゼッタイ。
ブラジルは旧宗主国たるポルトガルからの独立後は帝政や軍政が長かったものの、同じ元首が国家運営にあたった期間が長く、安定していた。これまた以前書いた様にチリが経済的にうまくいっているのも同じ理由だと思う。

って書いたが・・・昨年のルセフ大統領弾劾以降、ふらふらしている。現在のテメル大統領はきちんとした選挙で選ばれた人ではなく、あまり人気がない。そして2016年のGDPは3.6%マイナス!

ブラジルにおけるビジネスの難しさ

まず、労働者を守る法律多すぎ!一回福利厚生が導入されると撤廃することは難しい。加えて毎年10%賃金上昇(中国と同等)。これはインフレの原因にもなっている。
日本にいると実感しにくいが、海外、特に発展途上国だと工場で働いているワーカー(実際に工場のオペレーションを担うブルーカラー)の方々は賃金が上がるのが当たり前だと思っている。働き口がたくさんあるので、賃金上昇しない会社からは人がどんどんいなくなってしまうのである。僕はブラジルの工場のことは深く知らないが、中国においては電子部品でもフォークリフトでも、ワーカーの定着率は悪かった。好条件求めてどんどん転職である。一方で日本だと工場勤めは中国に比べれば定着率は高い。

次に、ブラジルは税制が複雑過ぎる。連邦税、州税、市税と三つあり、しかも頻繁に制度が変わる。会計士は税制が複雑なので儲かる。
若者には公務員と会計士と弁護士が人気の職業である。弁護士は訴訟社会であり、特に労働訴訟が多いので儲かる。公務員は賄賂を貰えるので儲かる。。。

加えて、税金の一種だが、輸出入に伴う関税が高い。これは投資していたフォークリフト会社たるユニキャリアのアメリカからブラジルにフォークリフトを輸出しようと画策していたので良く分かる。現地に工場がないと全然価格が勝負にならなかった。ブラジルは最後まで攻略出来ず。。

ブラジル人の考え方

ブラジル人は誰でもポルトガル語をしゃべれると思っているらしい。こちらの反応は関係なく、とにかくポルトガル語でしゃべり続ける。加えて、ブラジル経済が調子良くない=世界全体の経済状況も悪い、と思っている。他の国のことはブラジルの一般人はあまり分かっていない、というか関心がない。基本は閉じた世界なのである。食料も原油も国内でなんとかなるので、ある意味鎖国状態でもやっていける。これはエネルギーの無い日本や韓国とは根本的に違う点。
一方で、アメリカで流行ったものは何でも大好き。ワッツアップやFacebookの様なITサービスから、ファッションまでも。

少し話はずれるが、女性のメイクに関して・・・目の周りのメイクはやるが、肌のことはあまり気にしていない。豊胸手術はアルゼンチンとは違って無料ではないが、盛ん。ブラジル人医師は基本フリーランス。日本もフリーランスの医師が一部の科では増えている。

物価と為替と株価の見通し

はっきり言って、物価高い。スーパーで、醤油2リットルボトルが2,000円。日本だったら300円位。次いでウスターソースのボトル一本が1,000円。どゆこと??前述の関税のせいである。
スーパーでは爆買いをしている人を多く見かける。カートを三台位一杯にして買っている人も複数見た。過去にハイパーインフレがあったので現金を信頼していない。

普通にランチしても高い。チリやアルゼンチンと同等で、普通にランチは一人で1,500〜2,000円のイメージ。おいおい丸の内の方が安いぞ。

僕はこの物価の高さから、ブラジルレアル(BRL)が強すぎるのでは?と思っている。ただ、地方は物価がもう少し低いらしい。今回はリオデジャネイロとサンパウロという大都市しか訪問出来ていないので、判断するにはまだ早いか。

現地で話を聞いていると、今のUSD/BRL=3.15位は適切、またはBRLがもっと強くてもいいという声が多かった。僕はニュージーランドの稿で述べた様に現在のUSDは強すぎると思っているので、BRLが更に強くなる(USDが弱くなる)ことも頭の中にいれておかないといけない。そうするとブラジル経済にはマイナスである。
2016年のGDPはマイナス成長だったが、そろそろ底打ちか。同様の見方も多かった。政策金利は11.25%と高く、まだまだ下げる余地がある。ちょうど4/12にも1%下げた結果での11.25%であり、今年中に8%台もブラジル中央銀行は見据えている。そうするとやはりBRL安ではないか。ただ、繰り返しになるがUSDとの兼ね合いから積極的にBRLをショートする気にはなれない。

昨年のブラジル株上昇は端から見ても上がり過ぎでは?と思っていた。ドル高になるとアメリカの投資家は海外投資に走る傾向はあり、ラテンアメリカでどこ?となったらブラジル!となるケースが多い。
市場の代表として参照されるボベスパ指数は確かに去年かなり上がったが、正直、一部の構成企業上位に引っ張られている。
その上位とは、、、アンベブ(ビール)、イタウ、ブラデスコ、サンタンデールブラジル(以上銀行)、ペトロブラス(石油)とヴァーレ(鉄鉱石)である。

以上より、ブラジル株をどう考えるか。。。為替は対USDで弱くなりそうで株にはポジティブだし、経済も反転しそうだし、足元の政情以外不安な点はあまり見当たらない。とは言え株は去年上がり過ぎたと思うので、少し様子を見たい。

その他幾つか。特に3Gキャピタル

中国によるブラジルへの投資は盛ん。
そしてこれは他の国でも同じだが、日本企業は動きが遅い。。。かつ、我慢が効いていない。キリンは高値掴みした上で、ハイネケンに安値で売ってしまった。

ちなみに日本政府はブラジル企業に対してInvest Japan、もっと日本に投資して下さい!というのを打ち出しているが、経産省は日本の企業が外国企業に買われるのはだめだ、みたいなことをいつも言っている。矛盾がある。
僕は日本企業が外国企業の傘下になったとしても、その日本企業が更なる成長を掴むことに資するのならば歓迎すべきと思っている。「相手の懐に飛び込む」ということである。

話は変わるが、ブラジルの市中の車だと、アメリカのシボレー(GM)、フォード、韓国のヒュンダイ、KIAが多い。日本車はあまりない。 
 
最後にプライベートエクイティだが、ハインツ買収でバークシャー・ハサウェイと組んでいる3Gキャピタルが有名。ファストフードのバーガーキングも買収している。なんなのこのファンド?とずっと思っていたが、ビールで世界最大のメーカーたるアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ブランドでいうと、バドワイザーやコロナ。かつ、ブラジル最大時価総額アンベブの親会社)の個人大株主数人がGPである。
 
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