シカゴの取引所とクオンツファンド

シカゴに来たのは二回目。一回目の訪問は、産業革新機構にいた時に投資していたフォークリフト会社、ユニキャリアのUS工場に行った時である。US工場はマレンゴというシカゴから北西に一時間位のところにある。シカゴ在住アメリカ人に言わせると、ちょっと田舎ね〜という扱いらしい。。。いいところだと僕は思うが。

今回は、前回の記事で書いたアンアーバーから車で西に四時間かけて到着。そう言えばUSは高速道路の大部分が無料である。というか日本以外は無料の国が多いけど。アメリカだと全てがマイル表示なので、キロ換算するためには1.6をかけないといけない。車のスピードメーターも時速がマイルで書いてあるので、勘違いしやすい。だいたい70キロくらいで走ってるかなーと思いきや、本当は110キロ超だったということがちょいちょいある。

なお競馬好きとしては、マイル戦は1.6kmということは刷り込まれているので分かりやすい。マイルと言えばミエスクかタイキシャトル。

CME

投資家的にシカゴと言えばシカゴマーカンタイル取引所(CME)。FXをやっている人は、IMMのポジションは少なからず気にしているはず。日経平均先物も上場されていて、先物を取引している人にも重要な市場である。
そして僕の様に大豆やコーンも取引している人にとっては最も重要な市場。大豆やコーンは元々CBOTがメインだったが、2007年にCMEに買収された。

今回はCMEの友人のご好意により、トレーディングフロアを訪問させて頂いた。まだ場立ちなんてあるのかしら?と思っていたが、S&P500や大豆やコーンや米国債のオプションのみは場立ちのトレーダー達がピットで声を上げていた。先物は全て自動化されたとのことである。

トレーダー達は昔ながらに、身振り手振りで声を上げていた。ピットが12角なのは、立ち位置が限月ごとに分かれているからとのこと。
なぜオプションのみ場立ちが残っているのか?という質問に対しては、オプションは売り買いの戦略の組み合わせが多く、複雑だからという回答だったが、正直良く分からなかった。。。

CME含む取引所はいまや巨大なIT企業である。採用のライバルは、グーグルやアマゾンといった巨大IT企業または、ITスタートアップ。学生を囲い込むために、ミシガン大学コンピュータサイエンス専攻の一年生をインターンとして受け入れていた。そんなCMEのエンジニアには「トレーディングフロアは絶滅寸前の恐竜だね、hahaha」と言われていた。

CMEはスタートアップに投資するCVCも抱えている。CVCの位置付けは会社によって違うと思うが、CMEにおいてはシナジー追求してスタートアップを買収するということは考えていないとのこと。どちらかというと技術の最先端を出資を通じて追っかける、という色彩が強い。

ブロックチェーンはもうオールドファッションで、ICO(イニシャルコインオファリング)は現状は投機に過ぎないという見立てだった。あとセキュリティ分野を注視しているらしいが、このセクターは軍事主導とのこと。テクノロジーはやはり軍事からやってくると改めて思った。軍事は金を惜しまないからである。

またシカゴと言えばヘッジファンド、シタデルの本拠がある。シタデルはハーバード在籍時に個人で転換社債アービトラージをやっていたケネスグリフィンが立ち上げたファンドで、今や$25Bを超える規模になっている。リーマンショックの時には潰れかけたがそこから復活。僕はシタデルのファンドのみならず巨大金融機関を目指すという方向性が好きである。

クオンツファンド

NYでもクオンツファンドの人に何人かあったが、現在の方向性は2つ。①ITの設備投資による高頻度取引(HFT)、②マルチファクターモデルによる超短期売買、である。

まず①だが、こちらは注文をいかにして速く出すか、大量にデータ処理するか、ということが重要なので、光ファイバーやサーバーの増強という設備投資勝負になっている。規模が幅を効かせるビジネスである。

②は、例えばS&P500先物だったら、S&P500の変動に影響を与える要素を分解し、要素の変動に伴ってS&P先物を自動売買するということである。
要素としては、国債の金利だったり、マクロ指標だったり、ドルの動きだったり、が挙げられる。そして期間のリスクを排除するために1秒以下から半日位で取引している。つまり、①の要素もある。
また上記要素を人間が与えてマシンラーニングにより分析しているファンドも多い。ディープラーニングは金融の現場で使っている人はあまりおらず、画像分析、自然言語処理で活用が盛んとのこと。

以上の様に、短期のトレーディングは人間よりもアルゴリズムが強い。(とは言え全く勝てないわけではない。)では長期はなぜ人間が勝てるのか。それはクオンツファンドは基本的には過去に起きたことから将来予測をしているため、将来の不可思議な人間の動き(最近だとBrexitやトランプ)を読み解くのは難しいからだ。人間の感情を読めるのはまだ人間だけである。

クオンツファンドはどこも徹底した秘密主義だ。なぜならコピーされると市場の歪みがなくなり、自分達の優位性が失われるためである。クオンツ最高峰のルネッサンステクノロジーは情報流出を防ぐために特殊なテープ(!)で情報保存しているらしい。またメンバーは大体数学または理論物理出身。経済学やMBA出身はいない。

自分でクオンツファンドをやりたいかというと難しいところ。結局クオンツファンドは市場に流動性をもたらしてはいるが、世の中にプラスをもたらしているかというとそうでもない。僕は未来を予測するゲームとしてのトレーディングが面白くて大好きだが、本業はプライベートエクイティ/事業会社畑だなとクオンツファンドの人達と話していて思わされた。

1+

いいね! or シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加