美食の街サンセバスチャンと分子ガストロノミー

パンプローナからバスク地方のサンセバスチャンに移動。バスクといえば独立運動が盛んでETA(バスク祖国と自由)という団体がテロ活動を行っていた。1959年から活動開始し、800人もテロで殺害している。今年4月に完全武装解除宣言を行ったものの、過去にも同様の宣言をして取り下げたこともあるので本当にテロ活動を止めたのかははっきりしない。

現在はカタルーニャ独立(以前のブログ「レアルの試合観戦と、カタルーニャ独立問題」参照)ほどは盛り上がっていない模様。スペイン中央政府がカタルーニャに対して強硬なのはカタルーニャが独立すると次はバスク、となりかねないからだと思われる。

前回ブログを書いた後にカタルーニャ州政府は独立宣言を行った。中央政府による自治州の抑圧というのはフランコ時代を想起させる。だから独立推進派はなんだとー!と燃えるのだろう。ここは前も書いた様にマドリッドと温度差がある。

美食の街、サンセバスチャン

サンセバスチャン(バスク語ではドノスティア)は美食の街として有名。人口あたりのミシュランの星が世界で一番多いらしい。食事においてミシュランの星が全てではないのだが、指標にはなる。

海外でレストランを探す際に参考にしているのはミシュランガイド(お値段がはる店)と、グーグルマップの評価(カジュアルな店)。トリップアドバイザーを参照している人も多いと思うが、ウェブサイトが見づらい。

そして実際にお店を外から見て・・・の混み具合が最も重要!地元の人で混んでいる店は外れなし!観光客で混んでいる店はぼちぼち悪くない。ただ僕はお腹が強くはないので発展途上国だとお店の衛生状態と値段(安すぎないか)も重視している。

サンセバスチャンには5泊とゆっくりした。スペインの食事開始は遅い。お昼ごはんは14時、夜は21時という感じである。ので必然的に生活リズムが夜型になる。肌に良くない!

オープンイノベーションと分子ガストロノミー

サンセバスチャンでは、オープンイノベーションよろしく、街の発展のためにレシピをみんなで共有したらしい。やはりある地域や産業の経済発展は、関係者で色々共有して皆で伸びて行きましょう!というオープンな方がうまく行くケースが多い気がする。加えてその際は各参加者が出し惜しみしないことが重要。みんながいいとこ取りだけしようとすると失敗する。と、過去の半導体関連の国プロジェクトを見ていると思う。

分子ガストロノミーを取り入れているお店も多い。分子ガストロノミーとは直訳すると分子美食学になり、厳密には調理法を科学的(化学的・物理的)に分析することを指している。ただ、現在は科学っぽい色彩がある料理自体を指すこともあり、定義は広がっている。

ただ単にガストロノミーというと重厚なフランス料理を出すおしゃれなお店、と受け取る人も多いだろう。僕はそうだった。

分子ガストロノミーで最も有名だったレストランはスペインのエルブリだったが今は閉店。ここで編み出されたエスプーマ(あわあわしたやつ)は現在では色々なお店で提供されている。日本でもよく見る。エスプーマはペーストにした材料に凝固剤(ゼラチン・卵白等)を加え、亜酸化窒素を混ぜて作る。ふわふわ〜のあわあわ〜である。

日本で分子ガストロノミーっぽいお店というとどこだろう、、日本橋マンダリンのタパスモラキュラーバーかしら。

サンセバスチャンの三ツ星レストラン

サンセバスチャンにはミシュランの三ツ星レストランが三つある。そのうち予約が取れた二軒、MARTIN BERASATEGUI(マルティンベラサテギ)とAKELARE(アケラレ)に行ってみた。ARZAK(アルザック)は予約取れず。そう言えばどこも僻地にあり見晴らしが良いので夜ではなく昼行くべき。二つとも夜行って失敗した。何も見えませぬ。

この二つでは、AKELAREの方が分子っぽい。分子っぽいというのは、なんじゃこりゃ!という驚きがあるという意味である。特にAKELAREにおいては擬態したものが多い。下記写真は葉っぱにしか見えないがフォアグラである。

あとは豆腐みたいな見た目のケーキとか、見た目は完全に骨だけれど実は砂糖で出来てて食べられるとか。簡単に言うとネタに走っているレストランである。あと日本文化と日本料理の影響は多少ある。机の上には謎の盆栽。

MARTIN BERASATEGUIは擬態はそんなにないのだが、自分で混ぜてくださいねーという料理が多かった。色々な食材を皿にばらまいておいて、それぞれ食べてもよし、でも混ぜて食べるとおいしいよ、みたいな。年ごとのシグネチャー料理が順々に出て来るテイスティングコースにしたのだが、下記の2001年のサラダが一番おいしかった。

AKELAREはネタとしてはいいのだが、僕はMARTIN BERASATEGUIの方が好きかな。

料理みたいな職人の勘に頼っているものを科学的に解明しようという動き自体は面白いと思う。だが今のところ応用分野は高級なお店に限定されてしまっている気がする。そして若干ネタに走るために使われている?僕はネタに走っていることをけなしているわけではなく、それはそれでありだと思っているが。

職人の勘に頼っている製造プロセス(温度や、混ぜ方等)を解明して標準化しようという動きは製造業でも行われている。電子部品だとその要素は少ない(そもそもコピーし易い)のだが、機械や化学の分野だと職人に頼っている部分も大きい。僕はまだまだ職人の勘は解明出来ると思っているし、職人が日本にたくさんいるうちにその技術を伝承出来る様にしないと勿体無いと考えている。そういうことをやりたい。

サンセバスチャンのバル

サンセバスチャンのバルでも分子ガストロノミーを標榜しているところがある。例えばZerukoがそれである。ただ他のバルもピンチョスや料理に工夫を凝らしているので、ここがどうってことはなかった。。混んでいる店はどこもおいしい!空いてみる店は入ってないので分からない!

サンセバスチャンのバル街は川を隔てて西と東に分かれているのだが、西の方が観光客が多い。そしてどっちかというとおしゃれな感じ。東の方が地元感が強い。あと地面に座っている人の割合がかなり上がる。どっちも良いのでどっちも行ってみるべき。時間ないなら西だと思うけれど。

バルは20軒くらいは行ったと思うのだが、La Cuchara de San Telmoのフォアグラがやたらでかくて安い!ということしか覚えていない。とある日本人が作ったサンセバスチャンのバルに関するメモがロンドンの駐在員の間で出回っているらしく、それがめっちゃ参考になった。

バルの過ごし方は前回ブログ「美し過ぎる街スペインのパンプローナとスペインバルの過ごし方」参照。サンセバスチャンでは微発泡白ワインのチャコリも有名。どこで飲んでも発泡している気がしなかったけど。

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