ごっちゃになっている街、ニューオーリンズ
アメリカ南部の一都市でミシシッピ川の河口に位置しているニューオーリンズは、フランスとスペインとアフリカ文化が混ざり合った不思議な街である。街並もそうだし、クレオール料理、ケイジャン料理(こっちの方が少し田舎っぽい)、どちらも複数の料理がごっちゃになっている。
具体的料理ではジャンバラヤが有名。僕の中ではジャンバラヤは、ファミマに買収されてなくなったampmのお弁当のイメージ。
あとは豆を含むどろっとしたスープにご飯を入れたガンボという料理が有名なのだが、これはブラジルのフェイジョアーダに味も見た目も似ている。どちらもアフリカから連れて来られた奴隷が作った料理がルーツになっているからと思われる。
ニューオーリンズは、アメリカ国内を行き尽くしたアメリカ人にとってもエキゾチックで魅力のある場所とのこと。
こうなった背景は、フランス領→スペイン領→一瞬フランス→アメリカがフランスから購入、という変遷をニューオーリンズ含むルイジアナ州が辿ったことに加え、アフリカから多くの黒人が奴隷として連れて来られたことにある。
そう言えばアメリカに来て気付いたのが、都市の人口が少ないということ。ニューオーリンズの様な大きな街でも50万人弱であり、ニューオーリンズ都市圏まで含めても100万人超。アメリカの国土の広さに比べて人口がそれほどでもないことが影響している。中国だとちょっとした地方都市でも人口500万人位は普通なので感覚が大分違う。
プランテーションと奴隷
ニューオーリンズの主な産業は観光。そしてルイジアナ州としては、古くからのサトウキビ、メキシコ湾の海産物、石油が重要。なお、2005年のハリケーン・カトリーナでニューオーリンズは甚大な被害を被ったのだが、その後の資金援助により経済は復興しているとのこと。
今回、大規模に奴隷を酷使して砂糖を作っていたオークアレイというプランテーションに行った。話には聞いていたが、奴隷の小屋とプランテーションの豪邸の大きさ・造りが違い過ぎる。
そしてニューオーリンズは暑いので豪邸はどこまでも快適さ重視である。快適さとは、暑くないこと、そして虫がいないこと。如何に風通しをよくするかという設計がなされ、かつ豪邸側にはキッチンがない。火は熱いからである。部屋の中にも砂糖を入れて虫を集める瓶や、大きなうちわみたいな仕掛けがある。
奴隷の小屋の狭さや拘束具といった展示は、小学生の時に読んだアンクルトムの小屋を思い出した。トムは乱暴な農場主に最後は殺されてしまう。とんでもないことが起きていたんだなと改めて実感した。しかも150年位前まで。
しかし少し調べてみると、最近の黒人におけるアンクルトムの小屋の本としての評価は、トムが従順過ぎるとして批難の対象にもなっているらしい。奴隷解放宣言の原動力になった部分もあるとは思うのだが、これまたその様な見方もあるのだなと思わされた。
ブードゥー
ニューオーリンズで有名なものとしてブードゥーがある。元々はアフリカの土着信仰が起源で、奴隷として連れて来られた黒人を中心に広まったもの。蛇をまとった女性が踊り狂ったり、人形を使って他人を操ろうとしたりする呪術的な要素が有名である。
ニューオーリンズの人によると、ブードゥーを現在でも信じている人の割合は10%位とのこと。街中にはブードゥー美術館がある。
展示の中で面白いなと思ったのが、「ブードゥーは常に変わり続けるものであり、変わり続けるということが一貫している」と書かれていたこと。
例えば以下の展示。
ブードゥー美術館の一部なのだが、キリスト教なのかブードゥーなのか分からなくなっている。勿論ブードゥーが白人によって怪しいものとして迫害されていた中で仕方なくキリスト教を隠れ蓑にしていたという面もあるのだが、現在はキリスト教の信仰もごっちゃになっている。
あと上の写真を見れば分かるが、ブードゥーはお金及びタバコ(快楽)とも結びつきが強い。
続く宗教は時代に合わせて変化して行く。これは企業も一緒で、変わらない会社は滅びてしまう。
一方で、変化出来ない宗教は悲劇的な結末を迎えることが多い。特に終末思想が強いカルトで顕著で、最も有名な例は900人以上が集団自殺した人民寺院事件であろう。人民寺院及びカルトについては長くなるので別途書く予定。
追記:「新興宗教(カルト)というビジネスモデル」にてようやく更新