完璧な人間は存在しない

直近勤務していた産業革新機構(INCJ)にいて良かったことは、政府系ファンドだったこともあり、世の中ですごいと言われる人に会う機会が多くあったことである。
挙げれば限りは無いが、例えば東大の元総長だった吉川先生、新日鉄代表取締役であった三村さんである。永谷園とのUKフリーズドライ共同買収案件は自分がディールヘッドだったこともあり、お二人には直接お話しさせて頂く機会があった。その時感じたのは、当たり前だが、吉川先生や三村さんと言うすごい方々でも投資に関して100%理解している訳ではないということである。例えば株式売買契約の細かいポイントは恐らく分かってらっしゃらないと思う。
勿論投資案件の大所は押さえてらっしゃって、「この案件ってこういうことだよな。」という話はその通りです!という感じであった。
それぞれの専門分野、吉川先生だったら機械、三村さんだったら鉄鋼につきお二人より詳しい方はいらっしゃらないと思う。しかし、投資については全てを押さえられているかと言うとそうではなかった。
これは機械と鉄鋼と投資とどれが難しいかという問題ではない。すごいと言われている人(実際僕なぞ足元にも及ばないほどすごい)にも限界があるということである。

一方、投資の世界で言うと、LTCMを創設したJohn Meriwetherとランチをさせて頂く機会があった。投資の神とまで言われたメリウェザーですら、LTCMで98年、JWM Partnersで09年にファンドの閉鎖を経験している。そして今やっているメインの手法は債券のレラティブバリュー戦略ではなく、中国のベンチャー投資である!メリウェザーですら万能の神ではなかった。

投資の世界では、全戦全勝というのはあり得ない。勝率100%の負けない投資家というのは、詐欺師である。バーナード・マードフのファンドの様なものである。
クオンツ系で完璧に近いと思われるルネサンステクノロジーですら、閉鎖したファンドがある。投資は勝つときもあれば負けるときもある。だから分散してリスクを低減して、トータルでの勝利を目指す。
完璧な人間も完璧な投資家もこの世の中に存在しない。つまり、完璧な人間を恐れる必要はない。様々な本を読むとストイックな人の話はいくらでも出てくるが、僕はほんまかいな・・・?と疑っている。本当に本に書いてある通り生活しているのか?ちょっと誇張してないか?または緩んでいる日があるんじゃないか・・・?
ので、僕らは自分の限界を理解しつつ、自分と得意分野が異なる他の人と補い合いながら、雨の日も風の日も前に進んで行くしかないのだなと思う。

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