アメリカ合衆国まとめ

4/22から7/30までUSを旅していた。今回はそのまとめ。前回は「ラテンアメリカまとめ」参照。
さて、USで行ったところは以下である。
 
 
フェニックス→セドナ→グランドサークル(グランドキャニオンをはじめとする国立公園等)→ラスベガス→ニューオーリンズ→アトランタ→NY(45日滞在)→フィラデルフィア→ボストン→デトロイト→アンアーバー→シカゴ→デンバー→サンディエゴ→サンフランシスコ→シリコンバレー(パロアルト)→LA→シアトル
 
その中での学びは以下の3つ。
 
①なんだかんだUSは白人多数の国
②アメリカ人はポジティブだが悩みも抱えている、日本人は悲観的過ぎる
③USの株価水準は高い
 
である。

①なんだかんだUSは白人多数の国

日本に居た時は良く分かっていなかったので、白人は人口全体の50%位とイメージしていた。実際は2010年時点で64%を占める。つまりアメリカ人全体の2/3は白人。一方黒人は12.6%、もっと多いかと思っていた。

そうするとトランプの支持母体である白人低所得者層が多いのも理解出来る。そして僕が話す確率が高いアメリカ人、ある程度収入のあるホワイトカラーまたは旅行者は、トランプ嫌いと言う人が多い。あくまでトランプ嫌いであり、ヒラリー支持でもない、というところがポイントである。

一人だけトランプ支持のヘッジファンド勤務の人に会ったのだが、その人は完全リバリタリアン、自由主義者であった。各種データと実際に会った感触から考えられるトランプ支持者は、コアの白人低所得者+ヒラリー嫌い+リバリタリアンというところであろう。

あとUSは歴史が500年程度しか存在しない。歴史の教科書は1492年のコロンブスによるアメリカ大陸発見から始まっている。
その後、1776年の独立宣言で国がデザインされた。全ての人間は平等に作られているという根底にある考えは、当時としては革新的な発想であった。ただ、平等の対象は白人男性のみであり、黒人や女性は含まれていなかった。そんな概念がなかったのだ。その後、150年前の奴隷解放宣言、50年前の公民権法制定に至る。

近代において多くの国で、全ての人間は平等、と言う前提で物事が進められている。それが国の運営を最も円滑にする方法だったからである。そして、そういった微妙な均衡の中で僕らは生きていると改めて実感した。

②アメリカ人はポジティブだが悩みも抱えている、日本人は悲観的過ぎる

アメリカ人は自国に誇りと自信を持っているが、悩みも抱えている。経済格差がひどい、街に危ない地域が多い、街が汚い、医療費高過ぎ、トランプ大統領わけ分からん、等である。
ラテンアメリカも含めどの国も悩みを持っており、その中で過度に日本だけが悲観的な印象がある。正直、日本人はもっとポジティブに考えた方がいい。過去に「ラテンアメリカまとめ」で書いたが、日本は天然資源が無いのに産業がある。これはもっと活用出来る。そして企業にも家計にも現金がある。現金を溜め込まずに投資に回して有効に使うべきと僕は考える。
 
将来に悲観的だから企業も個人も現金を溜込む方向に行きやすい。この負の流れを断ち切るにはどうすればいいのか??
 
僕は現時点では最低賃金を徐々に上げるしかないと思っている。ラテンアメリカ及びUSを色々見た結果、賃金が上がる→消費拡大(企業の業績も向上)→物価上昇=インフレという流れが多くの国及び地域で起きていた。アルゼンチンでも、ブラジルでも、カリフォルニアでも同じである。今日よりも明日が良くなるとみんなが信じないと消費は喚起されない。

③USの株価水準は高い

理由は以下の5点である。
 
①実績P/Eが24倍程度と高い
②ボラティリティが低過ぎた(足元は上昇している)
③LBOのレバレッジが高い
④スタートアップのバリュエーションが理由なく高い
⑤10年周期で金融危機は来ている
 
詳細は以下の通り。更に突っ込んだ内容は「2017-18年に来るかも知れないAIショック」を見てください。
 
①実績P/Eは24倍程度と歴史的にみても高い水準
 
②2017年はボラティリティ(VIX)が低水準で推移。直近は10を割り込んでいた。一方で足元は上昇している
 
③LBOのレバレッジが高い。借入がEBITDAの6-7倍のディールも見られ、2006年と同様
 
④スタートアップのバリュエーションが理由なく高い。Yコンビネーターの様なアクセラレータープログラムを終えただけでプロダクトもないのに$30-40Mのバリューがついている。中央銀行の資金供給により、金が余っているからこそ
 
10年周期で金融危機は来ている。特に、クオンツ運用は10年周期で膨大な損を出している。1回目は、1987年10/19のブラックマンデー。一日でダウ平均が22.6%も下がったという恐ろしい日である。この時はポートフォリオインシュランスという考えがあり、ポートフォリオの中の現物株が下がっても同じだけ先物を売れば損失が相殺されて、損は出ないと思われていた。しかし現実には、先物の売りが他の売りを呼ぶ展開となり、大暴落した。
 
そして1998年はLTCMの破綻。LTCMはレラティブバリュー取引がメインだった。そして神々のファンドと呼ばれノーベル賞受賞者を抱えていたにも関わらず、レバレッジをかけ過ぎていたために、崩壊した。ロシアのデフォルトの影響を読み切れなかったのである。
 
最後は2007年8月のクオンツショック。このイベントはあまり有名ではないが、この時期にGSのグローバルアルファを始めとするクオンツ系のファンドが軒並みやられた。それまで効いていたファクター(例えば低P/E株を買って高P/E株を売る等)が突然効かなくなったのである。クオンツ系のファンドが同じ様なポジションを取っていたので、どこかが大量にポジションを解消した際に、他のファンドで損失が出てしまった。
 
以上である。
 
僕はUSの株価は大きな下げがくるのではと思っているが、何がトリガーになるのかは分からない。中国経済停滞かも知れないし、北朝鮮かも知れないし、トランプ大統領かも知れないし、クオンツ(特にAI)運用失敗かも知れない。
 
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コメント

  1. fuji より:

    面白いし、何処の何を読むより勉強になるなぁ。一次情報に触れているから話のリアリティが全然違うんだろうな。俺はアメリカ合衆国に一歩も足を踏み入れたことないから、その時点でもう全然ダメなんだけれど

    ショックとトリガーの因果関係について、時系列的にはトリガーがあるからショックが生じるんだろうけれど、説明のされ方は何時だってショックが起きた後、トリガーについての後付け的な説明だから何とも微妙な気持ちになる。そこでトリガーについての仮説を持って、それにベットすることが出来れば桁違いに儲けることが出来るんだろうけれど、その時における「確からしさ」ってどの程度のもんなのかしら。ベットしている本人はほぼ100%の確率での確信を以てるんだろうけれど、客観的に見れば結構なギャンブルに見える。映画The big shortのMichael Burryをふと思い出した。

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    • ele より:

      ありがとう!USは一回は行ってみるといいと思うよ、fujiがUSをどう見るのかも興味ある!
      そうそう、いつも後付けで解説がなされるんだよね。正直、確からしさってのは人によって違うと思う。ただ、100%はないはず。ので、50〜90%の確からしさに得られる想定リターンをかけ算して、期待値がどんなもんかと計算することになると思う。あとはリスクとの兼ね合い(どこまで市場が間違った方向に行き過ぎるか、トリガーが引かれるのがいつになりそうか)でポジションサイズを調整するのも必要かな。

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