2017-18年に来るかも知れないAIショック

最近の市場はボラティリティが低い状態が続いている。下図の通り、長期のVIXチャートを見ると2017年は常に低い状態が続いている。

(出所:CBOE

毎日VIX及びVIX先物を見ていると分かるが、最近は上がっても直ぐ低下する。ので僕はVIXが上がったらもぐら叩きと称してVXXを売っていた。

しかしこの状態はいつまで続くのだろうか??僕はかなり懐疑的になっている。余りにも低ボラティリティの状態が続いているので、ある証券会社からはVIX系商品へのマージンを変更しますよという連絡があった。それもあり、VXXショートの長期ポジションを最近解消した。

USで色々な人と話していた時、アメリカ株は割高と言う声は多かった。確かにS&P500のP/Eは高い。下記(実績ベース)を見ると分かるが、ITバブル(マルチプルの異常な上昇)とリーマンショック(EPSの異常な低下)を除けばほぼ過去最高値である。

(出所:http://www.multpl.com/

それに加えて僕としては、以下の2つも不安材料。

①LBOのレバレッジ(借入)がEBITDAの6-7倍のディールも見られ、市場が絶好調だった2006年と同様であること。

②スタートアップのバリュエーションが理由なく高いこと。これも1999年や2005年に多くあった現象。例えばYコンビネーターのプログラム終えただけでプロダクトも無いのに$30-40Mのバリューが付いていたり。中央銀行の資金供給により、金が余っているからこそ。

そして、1987年から10年周期で金融危機は起きている。2008年から10年近く経っていることで、そろそろ何か起きると僕は考えている。人間は痛みを忘れるからである。

しかし問題は、次の金融危機が何によって引き起こされるのか分からない点だ。以前も書いたETFショック?なのかも知れないし、中国が震源かも知れないし、トランプ大統領かも知れないし、AI運用破綻(AIショック)かも知れない。

ちなみに僕は最後のAIショック(正確には新たなクオンツショック)というのは結構あり得るのではと思っている。クオンツ運用は10年周期で膨大な損を出しているからである。

一回目、1987年10/19のブラックマンデー。一日でダウ平均が22.6%も下がったという恐ろしい日である。この時はポートフォリオインシュランスという今思えば間抜けな考えがあり、ポートフォリオの中の現物株が下がっても同じだけ先物を売れば損失が相殺されて、損は出ないと思われていた。しかし現実には、先物の売りが他の売りを呼ぶ展開となり、大暴落した。

そして1998年はLTCMの破綻。LTCMは以前のブログ「完璧な人間は存在しない」で書いたJohn Meriwetherが主催していたファンドで、レラティブバリュー取引がメインだった。そして神々のファンドと呼ばれノーベル賞受賞者を抱えていたにも関わらず、レバレッジをかけ過ぎていたために、崩壊した。ロシアのデフォルトの影響を読み切れなかったのである。

その後メリウェザーは2009年にも同様の戦略で失敗し、現在は中国のベンチャー投資をやっているのは以前書いた通り。ちなみに2009年のファンド閉鎖時はレバレッジをLTCMよりも大分低くしていたのにだめだったとのこと。世界金融危機の影響は大きかった・・・。

そして2007年8月のクオンツショック。このイベントはあまり有名ではないが、この時期にGSのグローバルアルファを始めとするクオンツ系のファンドが軒並みやられた。それまで効いていたファクター(例えば低P/E株を買って高P/E株を売る等)が突然効かなくなったのである。クオンツ系のファンドが同じ様なポジションを取っていたので、どこかが大量にポジションを解消した際に、他のファンドで損失が出てしまった。

例えば、、、安い(値段が低い)と思っていた株をどこかのファンドが売ればその株の値段はさらに下がる。そして損失に耐えきれずにさらに他のファンドが売る、、、という流れである。

ちなみにリーマンブラザーズが破綻したのは2008年9月なのでこの一年後。

さて僕が予測するAIショックとは何なのか。別にAIだけではなく、クオンツ系のファンドがまた損失出すのではという予測であり、代表的にAIと言っているだけである。

シカゴの取引所とクオンツファンド」で書いたが、現在のクオンツ運用の主流は①ITの設備投資による高頻度取引(HFT)、②マルチファクターモデルによる超短期売買、である。問題は②であり、今の時点ではAI(というか機械学習)を活用している幾つかの先端的なファンドが安定的に良いリターンをあげている様に見える。

しかし、いずれは他のファンドも同じ様なポジションを取り始めるはず。なぜなら使えるデータは過去のデータのみであり、過去データはみんながアクセス出来るからだ。そうするとどこかのファンドが損失を出した時に連鎖的に他のファンドも損切りするということがまた起こるだろう。

残念ながら歴史は繰り返す。

超短期売買だから大丈夫という考え方もあるが、フラッシュクラッシュみたいなことが断続的に起きるかも知れない。。。

僕は2007年のクオンツショックの時に証券会社で自己資金を使ってメザニン投資を行う部署にいた。大変なことが起きた!というのは分かっていた。しかし今後どうなる??というのは分かっていなかった。まさかその次の年にベアスターンズが崩壊気味の中でJPモルガンに買収され、リーマンブラザーズが破綻するなんて・・・!

2007年より今の方が金融の知識も経験も増えている。しかし、次の危機を読み切れるだろうか。危機は遠くない将来に恐らく来るだろう、しかしそれが何か分からない。よって僕はショックに耐えられる様なポジション構成、そして現金多めにしている。

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コメント

  1. fuji より:

    ”僕が同じことばかり言い出したら要注意”というフレーズがあったが、”脳とAI”というカテゴリ(タグ)は、特にAIという単語はブログの中で繰り返し出てくる。次の何かを考える上で重要なキーワードなんだろう。ディスカッションに堪えられるレベルまで勉強しておく

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  2. ele より:

    他の記事に書いたやつだね、そんなとこまで読んでくれてありがとう。そだね、今回のAIの流行がどこまでものになるのかってのは色々な意見があると思うんだけど、僕は人間を駆逐する様なものにはならないんじゃないかと考えてる。だからAIのことを恐れていない。そして脳がどういう構造なのかってのはすごく興味があって、これは筑駒行っててほんとに良かったなと思ってる。その分野の先端行ってる人が研究と臨床にいるから!

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