人体冷凍保存と将来蘇生への取組。謎のアルコー財団

人体冷凍保存とは?

昨日の記事で書いた様に、今日はアルコー財団を訪問して来た。今回は突撃訪問ではなく、ウェブサイトで見学ツアーを予約してから行った。
アルコー財団は知る人ぞ知る存在だったが、PayPalやゼロトゥワンで有名なピーターティールが会員になってから知名度が上昇したと思われる。僕はこの団体に15年位前から注目していた。フェニックスに来た理由、その2である。

アルコー財団の正式名称はAlcor life extension foundationであり、直訳するとアルコー延命財団となる。実際には延命というよりは、死亡直後の遺体を冷凍保存し、未来のテクノロジーで蘇らせようとしている団体である。技術的にはCryonics(クライオニクス)という名前がついている。アルコーのウェブサイトは詳しいので興味がある方は見てみてほしい。

例えば、、ピーターティールはアルコーの会員なので、死亡した場合、24時間以内に彼が住んでいるであろうカリフォルニアからアリゾナ州フェニックスのアルコー財団のラボに運ばれ、冷凍処理を施され、リアクターの中に保存される。保存期間は永久、蘇るまでである。
下記は実際に使われているリアクターであり、一つの円筒に四人の冷凍された遺体が入っている。

どうやって蘇生させるのか?

僕の中では、どうやって冷凍された遺体を蘇生させるのか?というのが最も興味を持っていた点であった。しかし答えとしては、当たり前だが現時点では解無し、ということであった。ナノテクノロジー?と聞いたところ、それが一番有望だとは言っていたが、アルコー財団において突っ込んだ研究がなされている訳ではなかった。アルコー財団はあくまで冷凍保存に注力しており、蘇生については詳しい訳ではないとのこと。

ちなみに僕は2100年頃にはナノテクノロジーにより脳以外の細胞は再現可能になると思っている。現在問題となっている病気も相当程度なんとかなってしまうのではないか。ただ、以前も主張した様に、その場合、ナノテクノロジーに頼っていないということがクールになるはずである。

会員になる方法と費用

アルコー財団の会員になることは難しくない。オンラインで申請して、契約を締結すればよい。言語は英語のみ。

初期登録は3万円(USD/JPY=100で換算、以下同じ)、年会費5万円と思ったよりも安い。また死亡時の人体冷凍保存にかかる費用は2,000万円である。脳のみの場合は800万円。ただ、海外に在住だと追加で1,000万円かかる。
生命保険の受益者(死亡後に保険金を受け取る人)をアルコー財団にしておけば、保険金で費用は賄える。アルコーではこの方式を推奨していた。日本でこういった財団を受益者に出来るのかは僕は今は分かっていない。アルコーの人にはあなたが調べたら是非教えて!と言われたが。
また初期費用と年会費は支払先が財団(アルコーはNPO)なので、少なくともアメリカでは税制上のメリットがある。こちらも日本の税務は税務署に聞かないと分からないが。

現在の会員数は1,000人強であり、既に冷凍された方は約150人。今までの例としてはあらゆる人がおり、2歳の子供から、若くしてがんを宣告されて亡くなった人、普通にお年を召した方、色々である。犬や猫のケースもある。アルコー財団の建物の中に、冷凍保存されている方々の生前の写真が飾られており、不思議な気持ちになった。

実際に訪問してみて

訪問前はもっとあやしい、カルト(新興宗教)みたいな集団なのかと思っていたが、想像よりずっとまじめに、科学的に運営していたので驚いた。僕はカルト・オカルト・スピリチュアル等は苦手である。というか全く信じていない。
見学ツアーも透明性があり、バックヤード含め全ての部屋を見せてくれた。説明もクリアである。既に運営開始から50年近く経っており、実績もある。

そもそも人を蘇らせることはどうなの?という議論はある。フランスではクライオニクスは違法らしい。日本ではどうなのかは僕は現時点では分からない。僕は人間は不死だと全てを明日以降に先送りし、努力をしなくなるから良くないと考えていたが、実際にそれに抗おうとしている光景・人々をみると、考えが揺らいだ。

現在のところ、まだ日本人の会員はアルコーにいないらしく、非常に熱心に勧誘された。日本人ではなく、日本に住んでいるアメリカ人には2人会員がいるらしい。うーん、どうしよう。しかし、不思議な経験であった。

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コメント

  1. Fuji より:

    案外まともというか、科学的に運営していたというのは驚き。脳のみっていうか生首のみの保管と聞いていたが。その時の冷凍処理と断首のオペレーションがかなり雑、と聞いて戦慄してた。実際のところは知らない。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4062162024
    ”見学ツアーも透明性があり、バックヤード含め全ての部屋を見せてくれた”というのはすごいね。PDCAサイクルがまわって色々とクリアにしたんだろうね。

    how、どうやって蘇生させるかという点が技術的に解決していないという以上に、who、誰が将来自分を蘇生してくれるのか、という点が気になる。契約には”技術が確立された時点でアルコー財団が漏れなく蘇生します”という条文が無いんでしょ?おそらく
    仮に俺の曽祖父がシャリシャリに凍ってたとして、、、蘇生しないかな、、、だってその蘇生した人の生活コストを持つのは蘇生させた人に帰属すると思うんだもん

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    • ele より:

      そうそう、この本は色々批判してるんだけど、今回行った感じだと誇張が多いのでは?と思った。そして言う通り、アルコー側も改善したのかも。
      首から上保存の人もいるみたいだけど、今は全身保存の人の方が多いと言っていたよ。
      そうだね、契約にはアルコーは蘇生には責任を負わない形になっている。そして、細かいので書かなかったんだけど、将来蘇生のためのお金をリザーブする仕組みもあるんだよね。しかし(リザーブしたお金で足りない場合も含め)蘇生した人のコストを誰が持つのかっていうのはまだ曖昧になっているかな。

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